秘密の地図を描こう

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 キラが拾ってきたとはいえ、一応捕虜だ。尋問をしないわけにはいかない。
「しかし、キラにはさせられないからな」
 それは、とバルトフェルドが苦笑とともに告げる。
「否定しません」
 特に今のキラでは、とマリューもうなずいて見せた。
「とりあえず、ニコルをそばにつけてありますし……あの子は喜々としてハッキングしているはずですよ」
 公認でハッキングできる機会など最近はなかったから、とラウは苦笑とともに言った。
「あいつのあれは、役立つんだが……」
 放っておくと、寝るのも食べるのも忘れるからな……とバルトフェルドはため息をつく。
「いいではありませんか。ニコル君が一緒なら、適当なところで引きはがしてくれますわ」
 それに、マリューがこう言って微笑む。
「そうだな」
 そういうことにしておくか、とバルトフェルドもため息をつく。
「あるいは、その前に尋問を終わらせればいいだけでしょう」
 キラが食事を忘れる前に、とラウは苦笑を浮かべながら口にした。
「まぁ、そんなところだろうな」
 とりあえず、名前と所属さえわかれば捕虜としての手続きをとることができる。現状はそれで十分だろう、とバルトフェルドもうなずく。
「そのくらいはすぐに終わってくれると思いますけど」
 だが、問題は話ができる状況なのかどうかではないか。
「彼の体調の方はどうなのでしょうか」
 意識が戻っていなかったらしいが、とマリューが呟く。そういう女性だからこそ、キラも信頼しているのだろうか。
「戻っているらしいですよ。ただ、使えない薬が多いらしくて、軍医殿が苦労しているそうです」
 そう考えながら、ラウは口を開く。
「そうですか……そうなると、やはりキラ君頼みの点が多いのですね」
 休ませたいのに、と彼女はため息をつく。
「一応、ニコルもそれなりの実力は持っていますが、キラには及びませんからね」
 そう言っている間にも医務室へとたどり着いた。
「入るぞ」
 言葉とともにバルトフェルドが中に足を踏み入れる。ラウ達も当然、その後に続いた。
「キラの拾いものは?」
 バルトフェルドがそう問いかける。
「意識は取り戻しているようですが……」
 困ったような表情で軍医が言葉を返してきた。
「問いかけても何も答えてくれませんので」
 治療しようにも反応がわからないと、と彼は続ける。
 そのまま、視線をカーテンが閉められている部分へと向けた。そこに彼がいるのだろう。
「そういうもんだろうな」
 苦笑を返すと、バルトフェルドはまっすぐにそこに足を向ける。
「開けるぞ」
 そのまま、遠慮なく彼はカーテンを引く。
「念のために、少し離れていてください」
 それを尻目にラウは軍医に声をかけた。
 その瞬間だ。
「ネオ!」
 バルトフェルドが向かった方向から聞き覚えのない声が飛んでくる。
「ネオとは、誰かな?」
 反射的にラウはそう問いかけてしまった。
「何を言っているんだよ、ネオ!」
 即座に返された言葉から、彼が指しているのは自分らしい、と推測する。つまり、相手は自分に似ていると言うことか。
「残念だが、私は君の言うネオではないが……ひょっとして、その人物は私に似ているのかね?」
 反射的にうなずく彼の仕草から、どうやら、自分達の仮説が現実味を帯びてくる。
「なら、私たちの知っている人物かもしれないね。とりあえず、君の名前と、その『ネオ』という人物のフルネームを教えてもらえるかな?」
 微笑みとともにそう問いかければ、予想外なくらい、彼はあっさりと答えを返してくれた。
 それがよかったのかどうか。ラウにはすぐに判断できな買ったが。

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